辞典士 2(前編)

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虚ろな目をした人々が、丘の上にある宗教施設へ向かう目撃情報が相次いでいる。
その丘は『諺(ことわざ)辞典士』の俺の管轄だ。面倒だが放置はできない。潜入捜査する事にした。
俺はわざと虚ろな目をして人々の列に加わり、施設に忍び込んだ。
中には、黒い服を着た男が中央の祭壇に立ち、私は迷える子羊達の守護者だとか何とか、訳の分からぬ事を演説していた。教祖か。辞典を携えている。何かの辞典士か。祭壇前には大勢の人々が恍惚の眼差しで教祖を見詰めている。
俺は辞典を出し『飛んで火にいる夏の虫』をなぞって唱え、教祖の懐へ飛んだ。
「よう、お前が教祖様か」
「な、何ですかあなたは!『をかし』!」
「…効かねぇ。来る前『疑心暗鬼を生ず』をかけたしな」
「何っ!」
「『をかし』を遠くから放ち、心を操ってたのか。お前『古語辞典士』だな」
「そうだ。貴様、辞典自警団か…!ならば消すまで。『さらぬわかれ』!」
後編へ続く
SF
公開:20/08/14 23:03
更新:20/08/15 00:08
辞典士シリーズ 不定期連載 辞書必携 1からお読み下さい

文豪たこ( 神奈川 )

「30秒後に意外な結末」がテーマの140字ショートショーティスト。

面白ければそれでよし、と思って書く日々。

2020.7.15『影ができるスプレー』を初投稿。以降、約半年で150作品を執筆。

◎2020.11.15『ハロウィンの怪人』急上昇ランキング2位
◎12.05『星を見つけた』急上昇ランキング1位
◎12.19『無視される日本語』急上昇ランキング3位
◎12.25『高給な副業』急上昇ランキング3位
◎2021.2.6『ひねくれもの』急上昇ランキング2位

皆様からの「面白かった」が聞ければ、それ以上の喜びはありません。

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