名前は？

「それでは受領証にサインをお願いします」セールスマンは秘書ロボットを置いて帰っていった。オフィスの隅に立つロボットは清楚な女性。事前にセールスマンが私の趣味を詳しく聞きだしただけあって好みのタイプだ。
「まあ、椅子にかけたまえ」
「はい、お茶を淹れましょうか」「よく気がつくね」秘書ロボットは顔色をうかがうのが得意なようだ。
「ところで君の名前は？」「命名いただくことになっています」
「何がいいかな、うーん」
「正田明子では」
「少し硬いね」
「那須しのぶ」
「柔らか過ぎる」
「長谷部まり子、依田京子、福原かの子、露木ヒサ、深谷有希子、、」
「もういい、君の気にいる名前でいい」
「ロボットは嗜好を持ちません」
「前職の名前は？」
「秘密情報です」
「いいじゃないか。セールスマンに聞くよ。彼の名前は何だったかな」
「野村芳明、いえ、山崎文也、ちがった、朝倉啓二、渡辺信幸、藤本研一郎かも、、」