飛んで灯にいる

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ナビを信じて運転したら、ナビにないトンネルを潜った。古いナビだから、まだ未登録なんだろう。そう思っていたのに、ナビにない道に出た。街に戻るはずなのに、ただ真っ暗でヘッドライトに照らされた道しか見えない。
「嘘でしょ?」
Uターンしようにも道が細くて狭い。車を降りると、迫るような闇の濃度に気圧された。
「なにこれ?」
草を靡かせる音。虫の気配。それ以外には何もわからない、闇。刹那、背後に人の気配を感じる。そんなわけないのだ。だけど、闇が恐怖を増殖させる。風の音が、断末魔に聞こえる。誰かの息遣いが、足元から見上げてくる妄想で、頭が痺れた。
遠くで白い光が見える。電灯だ。椅子を一つ照らしてる。灯りを求めてそこまで歩いた。白い光の下の椅子に座る。安堵して、空を仰いだ。
目が、合った。
灯りで闇を消して、日常から消えたはずのソレが、真っ赤に開いて笑っていた。
光の罠だ。
飛んで灯にいる、私は虫だ。
ホラー
公開:20/08/15 20:10
夜の国道沿いの たった一つの電灯は 心象風景のように、不思議です

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
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