救いの手

6
5

父親が足音を大きく立てながら、部屋の隅で座ってる息子に近づいた。
腕を大きく振り上げ、息子の頭を思いっきり叩いた。
息子は頭を両手で守ろうとすると、父親は右足で息子の身体を思いっきり蹴り飛ばす。

息子は倒れ込んでしまい、抵抗することも出来ない。
父親の暴力は止まることなく、されるがままだ。

「神様…助けて…」

息子は、涙を流しながら神様が助けてくれるのを待っていた。
この痛みと恐怖から助けてくれると信じていたのだろう。

父親の暴力は何日も、何日も続いた。

神様は、まだ助けに来ない。

それから数日後。
父親は部屋で、赤い水たまりの上に倒れていた。
息子の手には、赤く染まったナイフが握られている。

「は…はは…ははは…」

倒れている父親を見て、口元を緩ませて笑っていた。
痛みと恐怖で震えている少年を、神様は助けてくれなかった。

少年は自分の手で、自分を救ったのだ。
その他
公開:20/08/15 19:19

たーくん。( 関西 )

ショートショートが好きで登録させてもらいました。
よろしくお願いします!

僕の書いた話が、頭の片隅に残ってくれたら嬉しいです。

★Twitter
https://twitter.com/ta_kun0717

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容