軽い贈り物

花柄の包装紙にリボンをつけた箱が彼から届いた。箱の中に風船と手紙。
何の荷物なのかしら。彼女は膨らんだ風船をみると、彼の手紙を開いた。

僕はいま車を走らせています。溢れる都会の音の流れを疾走。両側にLEDが点滅したビルのガラスの壁。派手な光の林を走り抜けます。
やがて都心から出て深夜の高速を突っ走ります。
明け方近くに高原地方にたどり着きました。白樺林のあいだを縫って滑るように高地を目指して走りつづけます。
そろそろ明るくなってきました。見晴らしのよい場所で車を止めて降ります。広がる山々の景色です。空気が乾いてすがすがしく気持ちいいです。胸を大きく張って思い切り深呼吸します。
深く呼吸した空気をゴム風船に吹き込みました。
箱の風船がそれです。あなたへのささやかな贈り物にさせていただきたいと思います。

変なの。そう言うと彼女はマンションのベランダから空に風船を飛ばした。