6日目の蝉

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「あー、クソみたいに暑いわ」
ミーンミンミン
「あ?なんどいそれ。東京モンの蝉はナヨナヨしいのお」
ミーンミンミン
「もっと腹から声出さんかいや」
ミーン……ミン
「けっ、今時の若者と変わらんのお。どいつもこいつもアカンタレや」
……ミーン
「ほら、もっと声出さな彼女出来へんぞ。草食系とか言うてたら死ぬでな」
ミーン!
「ほお」
ミーン!
「ええやないか!」
ミーン!ミーン!
「その意気や!」
「あ、パパ〜あれあれ」
カンカン帽を被った子供が、髭面の男を引っ張ってきた。その男は下駄をカタカタ鳴らせ、蝉に近づいていく。
「よおし、任せとけ」
男はヒョイッと蝉を掴むと、子供の持っていた虫かごに放り込んだ。
ジジッ……
「すごーい!」
「次は自分で捕まえろよ」
「えー怖いも〜ん」

待ち受けには息子夫婦と3人の孫。ため息混じりに携帯を閉じる。いつか一緒に暮らせへんやろか。孤独さが身に染みた。
その他
公開:20/08/15 15:44

まる

よろしくお願いします。

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