手をたずさえて

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―戦争の時は中国大陸にいたんだ。
祖父は色褪せた地図を広げ、静かに語り始めた。

そう、大体この辺りまで。重い装備で毎日歩きづめだ。辛かったよ。幸い戦闘らしきものは殆ど無かったが。
いちばん記憶に残っていること?
…ある晩、敵の兵隊が迷い込んできてな…それで木に吊るして…皆で殺してしまったよ…戦争だから。あれは…忘れられない。

終戦後は怖くてな。昼は隠れて夜だけ歩いて港に向かったけど、直前で現地の人に見つかった。殺されると思ったよ。でもその人は
『おめでとう。もう貴方は国に帰れる。今までのことは全て戦争のせいだ。私は貴方達を恨まない。貴方を殺さずにすむことを嬉しく思う』
そう言って港まで送ってくれた。涙が出たよ。ああ本当に戦争は終わったんだと…。

―話を聞いた数年後に祖父は他界した。かの地の方も、もはや鬼籍に入られているであろう。
願わくば二人再び手をたずさえて、共に語りあえんことを。
その他
公開:20/08/15 12:20
更新:21/08/10 17:12
メモリアル三部作 #3 拙作『手をたずさえて』を 加筆・修正したものです 8月15日は終戦記念日 同時に私の誕生日でもあります せっかくこの日に生まれたのなら きちんと忘れずに生きていきたい

秋田柴子

2019年11月より、SSGの庭師となりました。
現在SSから長編まで幅広く書いております。

【活動歴】
・東京新聞300文字小説 優秀賞1回 入選2回
・SSG 空想競技コンテスト 入賞
・『第二回日本おいしい小説大賞』最終候補(小学館)
・SSマガジン『ベリショーズ vol.5,6,7,light』掲載(Kindle無料配信中)
https://www.amazon.co.jp/dp/B096821HSW

【近況】
 いろいろ書いてます(笑)

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