夏野菜の扉

0
1

脚が竦む…一歩も歩き出せない。荒くなる呼吸に青くなる顔。
私は大舞台を前にステージに上がれないでいた。
「どうしたんだ?」
メンバーが私に声をかけてくる。
「眼鏡が…眼鏡がないの…」
「はぁ?眼鏡ならかけているじゃん」
「違うの!お客さんが野菜に見える眼鏡。あれがないと私、ステージに立てない!」
昔から歌が好きで歌手になる事を夢見ていた私。
だが私は凄くあがり症である。
その弱点を克服すべく、両親から貰った眼鏡。それが”お客さんが野菜に見える眼鏡”である。
『お客さんは皆カボチャと思え』と言われ、その眼鏡をかけると本当に観客がカボチャに見えた。
あの眼鏡あってこそ私はステージに立てるのにどうしたらいいの…
「…夏野菜の扉を使おう」
その言葉に緊張が走る。
「夏野菜の…扉?」
マネージャーは涙ぐむ私を無理やり立たせるとその扉の向こうに押し出した。
「これでもう大丈夫。さあ、歌ってらっしゃい」
公開:20/08/13 19:26
続かない

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容