戦場の悲劇

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男は激痛によって目を覚ました。
「気がついたかい」
見覚えの無いエプロン姿の女が汗を拭いてくれた。
この女の住む家だろうか。ベッドは古びていて、上に服が干されている。男は安堵した。
「てことは、俺はあの河原から味方の村まで運ばれたのか」
「あんたの傍に倒れていた男は死んでいたよ」
「そうか」
「あんたが殺してくれたのかい?」
「ああ」
女は血の気が引いて顔が強張った。
「おい、どうしたんだ?まさか」
「私の夫だよ」
男は魂を引っこ抜かれたように呼吸を忘れてしまった。
上体を起こそうとすると、自分の肩に包帯が巻かれていることに気づいた。
「なぜ俺を殺さなかった!」
「もう出ていっておくれ!」
男は銃を手に取り慌てて玄関に駆け寄った。
だがすぐにまた銃を床に置いた。
「また来る」
「何をしに?」
「わからない。だが必ず戻る。この戦争さえ終わったら」
二人は涙に濡れた顔で互いに見つめ合っていた。
その他
公開:20/08/13 18:24

水素カフェ( 東京 )

 

最近は小説以外にもお絵描きやゲームシナリオの執筆など創作の幅を広げており、相対的にSS投稿が遅くなっております。…スミマセン。
あれやこれやとやりたいことが多すぎて大変です…。

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