瞳島の女

6
7

私は穴子漁師をしています。休日にはこけしを作ります。ただそれだけの女です。
魂を感じる。人はそんなふうに私のこけしを表現するけれど、魂って何ですか。私は佇まいの美しい男の人が好きで、そんな男に出会うと舟を出して瞳島に誘います。
樹々の緑に覆われた島の中央には巨大な岩があって、その上に立つと、360度の樹海と、その果てに広がる海と地平線に男たちは心を奪われてしまう。
心奪われた男は野生動物に狙われやすいから、私がそばを離れずにいると、大抵の男は私に触れようとするのです。無垢な心に理性などありません。だから私は男の神経を抜きます。首筋から膵臓に抜ける痛点のない溝に針金を刺し、熱く溶けた蠟を流し入れて先端を固めます。指先に感じる底に触れた弾力。ハリのある魚卵のようなあの感触が魂なのでしょうか。
男たちが立つ巨大な岩は化石化した地球の瞳です。
その瞳が男の野暮を削ぎ落とし、私は男の髪を剃るのです。
公開:20/08/13 18:17

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容