肝試しの温度

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「ハァ、ハァ、ハァ」
一心不乱に走っている。いや逃げている。
恐怖が絶頂に達し、足元が見えない恐怖心は後回しになっている。
何かに躓く。慌てて振り返るが追ってくる気配はない。
通知音にビクリとする。通知画面にはタケシの名前があった。
『わりー。寝過ごした。今どこ?』

肝試しを提案してきたのはタケシだった。
山手に廃墟ホテルがある。地元では心霊スポットだ。
0時に車でタケシを拾い、深夜の山道をあがっていった。
「なんでまた肝試しなんだよ。」
車を止め実際廃屋を目の前に怖気づいていた。
「話のネタになるだろ。お盆だし出れるとしたら今だろ。」
「じゃあ心霊写真撮っとかないとな。」
スマホのレンズをタケシに向けた。
カメラアプリと間違えて、サーモカメラアプリを起動していた。
「おっと、間違え…」
血の気が引く。
とっさに駆け出していた。

…無かったのだ。
画面にあるべきタケシの姿が。
ホラー
公開:20/08/13 16:35

吉田図工( 日本 )

まずは自分が楽しむこと。

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