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夏の暮れ。林の傍の日本家屋には蝉の喧騒が響いている。陽は夜へと落ちていたが、畳の上に正座する少女二人は、熱心に稽古に励んでいた。
少女らの師匠である婦人が、手に持った風鈴を揺らすと「はい」と凛々しく年長の子が、挙手をした。
「風の音です。夕立の後の」
彼女達が学んでいるのは「利き風鈴」。鈴に込められた季節の音色を聴いて何の音かを当てる競技だ。
「それだけかしら?もっと耳を傾けてごらんなさい」
師の言葉に、口を閉ざしていた少女の方が、はたと何かに気が付いて呟く。
「騒がしいほどの蝉時雨」
夏の終わりのこの時期は日暮や寒蟬の出番のはずだ。微笑む婦人が軒下に飾っていた風鈴を一つ手に取ると、途端に辺りは静寂に包まれた。
「正解ですか」詰め寄る教え子達に向かって師匠はシッと口元に指をあてる。
ドンという低い音が遠くから聞こえた。縁側から夏空を見上げると、そこには満開の花丸が咲いていた。
少女らの師匠である婦人が、手に持った風鈴を揺らすと「はい」と凛々しく年長の子が、挙手をした。
「風の音です。夕立の後の」
彼女達が学んでいるのは「利き風鈴」。鈴に込められた季節の音色を聴いて何の音かを当てる競技だ。
「それだけかしら?もっと耳を傾けてごらんなさい」
師の言葉に、口を閉ざしていた少女の方が、はたと何かに気が付いて呟く。
「騒がしいほどの蝉時雨」
夏の終わりのこの時期は日暮や寒蟬の出番のはずだ。微笑む婦人が軒下に飾っていた風鈴を一つ手に取ると、途端に辺りは静寂に包まれた。
「正解ですか」詰め寄る教え子達に向かって師匠はシッと口元に指をあてる。
ドンという低い音が遠くから聞こえた。縁側から夏空を見上げると、そこには満開の花丸が咲いていた。
その他
公開:20/08/13 13:29
更新:20/08/13 13:34
更新:20/08/13 13:34
現実世界の2次創作
誰かに教えたくなるような物語を書きたいです
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