数時間の罪

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大人はいつだって勝手だ。俺たちを捨て、今度は里親に出す。それが正しい判断だって最初から決めつけてる。

来年になればここを出て弟を引き取るつもりだった。それなのに明日、弟はここから連れ出される。だから俺たちは真夜中の脱走を決行した。眠い目をこする細い腕を引き、幸せを求めて歩き出す。

最寄駅まで一時間。始発まではあと二時間。バイトで貯めた金で、一番端の一番高い『未来行き』の切符を二枚買ってベンチで寄り添う。
心がささくれているせいで優しい言葉もかけられない。

電車に乗り、揺られて微睡んでいるうちに、朝日に顔を撫でられて目を覚ます。次の駅が近づき、速度を落とした車窓からは、施設の車とパトカーが見えた。

ほっとしていた。弟から奪おうとしていたものを奪う前で。
「兄ちゃん、ありがと」
「ああ」
窓を開け『未来行き』の切符を過去に向かって放した。
これで本物の未来へ行ける。そんな気がしていた。
青春
公開:20/08/13 08:46

森川 雨

ショートショートには不向きな書き方かもしれませんが、こちらで修行させていただきたくお邪魔しました。

よろしくお願いします。

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