ランドセルの死神

ランドセルの死神。死を模した漆黒の銃に不釣り合いなランドセルが彼の象徴だ。

依頼があればどんな相手も必ず殺した。
死を生み出すことが仕事だった。

そんな彼を変えたのは妻だ。
彼女が彼に心を与えた。

組織を抜け、相棒の銃も失った。

追い詰められ、死を覚悟したその時、未来人と名乗る妙な男が彼を助けた。
　
それから40年、心残りは…。

赤い屋根の家の前に老人が立っている。

「今更、会って何になる…」

身を翻し立ち去ろうとした。

その時

「今日は火曜日だから、来ると思ってましたよ」

懐かしいカレーの香り。車椅子の妻が微笑む。

奪った命。生み出した死。
罪も罰も受け入れよう。
ただ、今は少しだけ…

死神のランドセルに銃はない。

しかし、
死神と呼ばれた男の傍に
時を経ても変わらぬ愛が寄り添う。

穏やかな時が過ぎゆく。

…死が2人を別つまで。