ジェネリックドリーム

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夜に浸された部屋のなかで、夢の淵に立ちながら文字を打ち込む。時折欠伸を挟みながら、うっかりな誤字を直しながら、スマートフォンの画面に指を滑らせる。
選ばれた文字が連なり、単語となる。単語が重なり、文になる。眠気に蹴飛ばされて欠伸をひとつ、打ち終わった文章に句点をひとつ。

そうして出来上がった文章を横にスワイプすれば、先程まで画面に表示されていた文字が飛び出し、ふわふわと宙に浮く。
すると薄暗闇の部屋の中から「完成ですか」と声がする。欠伸とともに頷けば、どこからともなく獏が顔を出して、1文字も残さずそれをぺろりと食べてしまった。

現代人の睡眠時間の低下、および質の低下に伴い、彼らの世界では夢の値段が高騰しているらしい。
だから私は擬似夢を書く。人が寝静まった、夢に1番近い時間帯に、夢のような荒唐無稽なお話を。満足気に夜に消えていく獏たちのために。なんども、なんども。
ファンタジー
公開:20/08/13 01:31

chaccororo

めっちゃトイレ行きたい時間と、そうでもない時間を行き来してます。

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