臆病ヤドカリ海の旅

12
10

目の前の岩に張り付いたイソギンチャクが、ぼくに話しかけてきた。
「ねえ、ヤドカリさん。君は動けるのに、どうしていつも岩陰に隠れているの?」
「怖いんだ。タコに見つかればまるごと食べられちゃう」
「それじゃあ、ぼくを君の背中に乗せておくれよ。ぼくの触手で君を守ってあげる」
「ほんとうに?」
「うん。その代わり、ぼくをいろんなところに連れてってくれないかな」
その日から、ぼくらは海を一緒に旅した。
誰も知らない海中洞窟。光り輝くサンゴの群れ。ときには、クジラの大きなお腹の中も旅した。
はじめはとても怖かった。というか、今でも海はだいぶ怖い。
でも、まだまだ見たい景色は沢山あるし、なにより、いつまでも君と一緒にいたいから。
「ねえ、イソギンチャクさん。これからもぼくのこと守ってくれる?」
「もちろん。君も、これからもぼくに知らない海を見せてよ」
ぼくは頷くと、君を乗せて再びゆっくりと歩き出した。
その他
公開:20/08/14 14:49

日常のソクラテス( 神奈川 )

19歳男子大学生です。
ショートショートの自由でちょっぴり不思議な世界観に惹かれ、自分も書いてみたいと思うようになりました!
主に恋愛、青春、ファンタジー、日常系を中心に書いています。
まだまだ勉強中です!ぜひコメントいただけたら嬉しいです!
ツイッターはこちら↓
https://twitter.com/socratesla55

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容