魔女の朝顔

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 夏休み前、先生が朝顔の鉢を持って帰るようにと皆に言った。僕は鉢を持ってトボトボと歩く。僕の朝顔は枯れてしまった。遊びに夢中で水やりを忘れてしまったから。こんなの持って帰ったら絶対にお母さんに怒られるし、ここの家の前に置いて行っちゃおう。僕は鉢を置いて辺りを見回すとダッシュ!瞬間、ガシッとえり首を掴まれた。
「こおらあ!」
「わあああ!」
 振り返ると怖い顔のお婆さんが僕を捕まえていた。
「ごめんなさいごめんなさい」
 謝る僕を放したお婆さんが枯れた朝顔を見る。
「来い」
 お婆さんに続いて家に入ると、僕は思わずすげー!と叫んだ。中は一面朝顔だらけ。ガラス張りの天井や壁に張られたロープに朝顔がたくさん巻きついている。
 ほら、とお婆さんは僕に小さな朝顔の鉢をくれた。
「もう枯れねえぞ」
 翌日から僕は朝しか起きていることが出来なくなった。僕の顔をした朝顔が、元気にプールに出かけて行った。
その他
公開:20/08/14 09:52

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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