奉公剤

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奉公人という言葉を、知っているだろうか?
早い話、「家のお手伝いさん」とでも思ってもらえればいい。
ここに、俺が長年かけて開発した『奉公剤』がある。家に来た客は匂いを嗅ぐと、奉公人になって家事をしてくれる、という効き目がある。
ビジネスでの成功は、保証されたも同然だ。こんな陰気臭いボロアパートの2階とも、おさらばできる。
おや。実験での残り香が、少々きつかったようだ。甘ったるい匂いが、部屋に充満してしまった。俺は窓を開けて、換気した。
ん?何やら家が揺れている気がする。地震か?
確認の為に、俺は窓の外を見た。
すると、大勢の老若男女や、ゾウやキリンなどの動物や、ハチの大群などが、地響きを伴ってこちらへやって来る。しまった、窓を開けたから香りが漏れたのか!
「奉公に参りました〜!」
人々は笑顔で手を振り、動物達は鳴いている。俺は青ざめた。
押し寄せた重さでボロアパートは潰れ、奉公剤も潰れた。
その他
公開:20/08/14 09:11
更新:20/08/14 14:51
400文字

文豪たこ( 神奈川 )

「30秒後に意外な結末」がテーマの140字ショートショーティスト。

面白ければそれでよし、と思って書く日々。

2020.7.15『影ができるスプレー』を初投稿。以降、約半年で150作品を執筆。

◎2020.11.15『ハロウィンの怪人』急上昇ランキング2位
◎12.05『星を見つけた』急上昇ランキング1位
◎12.19『無視される日本語』急上昇ランキング3位
◎12.25『高給な副業』急上昇ランキング3位
◎2021.2.6『ひねくれもの』急上昇ランキング2位

皆様からの「面白かった」が聞ければ、それ以上の喜びはありません。

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