いま、ここにいる奇跡

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ウチに赤紙が来たのは、泰明がまだお腹にいた時だった。でもお祖父さん、言い出せなくてね。こっちから聞いてやったんだ。あんた赤紙来ただろってね。そうしたら『判るか』だと。判るに決まってるさ、夫婦だから。
それで泰明が産まれたあと、中国に行っちゃったんだよ。それで死んでたら、あんたの母さんは産まれてなかったね。

お祖父さんは一旦帰ってきたけど、もう一度召集されてね。また中国に行ってる間に芳子が産まれたんだ。芳子は父親を知らないから、帰ってきた時『知らない男の人が来た』って怖くて泣きべそかいて。

大空襲の時は芳子を背負ってねんねこでくるんで、泰明の手を引っ張って炎の燃えてる中を逃げ回った。途中で泰明が『靴が脱げた』なんて言うから『そんなのいい!』って急いで逃げたさ。
お祖母ちゃん、ひとっつも忘れてないよ。
しーちゃんもよく覚えとくんだ。
戦争はね。怖いんだ。もう二度とやっちゃいかん。絶対に。
その他
公開:20/08/13 23:32
更新:21/08/10 17:00
メモリアル三部作 #1 子供の頃、祖母に聞いたお話

秋田柴子

2019年11月、SSGの庭師となりました
現在は主にnote・TALES・公募でSS~長編を書いています
留守ばかりですみません

【活動歴】
・第2回 日本おいしい小説大賞 最終候補(小学館)
・第31回やまなし文学賞 佳作『雨を知るもの』
・創作大賞2025 入選 『栗と牡丹』
・SSアンソロジー『ベリショーズ』寄稿
・ホラーアンソロジー『ウタ・カタ』寄稿

【刊行】
・第31回やまなし文学賞受賞作品集(山梨日日新聞社)
・栗は月色、こがね色 和菓子処長月堂(朝日文庫)
 

【note】
 https://note.com/akishiba_note

【Twitter】
 https://twitter.com/CNecozo

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