聖像製造工場

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私は聖像製造会社の社長。工場の働き手は私、妻、娘と婆さんである。
工程を説明する。まず聖像の成型。私が手作りしたいろんな種類の型を何年も消耗するまで使う。二つの型を合わせて樹脂を流し込む。セラミックも混ぜて彫像っぽい質感を作る。樹脂が固まったら型から取り出して表面を丁寧に仕上げる。ヤスリで磨いたり、髪の毛のような細部を彫ったり、仕上げ工程は妻の担当。次に衣服を着色し、顔も描く。これも妻が行う。そして衣装や装飾品をつける。娘と婆さんの工程だ。こうして聖像が出来上がる。気を遣うのは、製造は単なる商品、消費財ではないということである。一体一体に発注先の宗派の魂が欠かせない。最終工程では私が入魂する。これは企業秘密で、この工程で他社ではできない魅力ある聖像が生まれる。それで世界中の国から、宗派からさまざまな聖像の注文が途絶えない。腕が千本とか顔が三つとか。最近は耳の大きなネズミの聖像を受注した。
その他
公開:20/08/12 10:35

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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