河童不動産ー蛙の恩返し

12
6

豪雨が襲いあっという間に家が土砂に流された。命からがら、逃げ出して御神木にしがみつく。土砂に完全に飲み込まれなかったのは運が良かったとしか言いようがない。
「ひ、避難だ」
己を鼓舞しながら山を下りると突如、緑色の文字が踊る建物が現れた。
「河童、不動産?」
避難させて貰おうとドアを押す。中には電話応対する河童や、雑巾みたいな爺さんを説得する河童がいた。
「あ! ご無事でしたか土地神さま!」
一人の河童が走り寄って来る。まさか自分の事かと狼狽えた。
「ちょいと、御免よ」
後ろからぬっと現れた巨大なガマガエルが、どすんと椅子に座った。
「あんた、縄張りを綺麗にしてくれた佐々木の爺さんだな。残念だったな。」
土地神と呼ばれたガマガエルが、佐々木を哀れみの表情で見つめた。
「私、死んだんですね」
「ーー爺さん、足が生えてるな。行いが良かったな」

蛙の大合唱に混じって、救助の声がする。
その他
公開:20/08/11 00:00
更新:20/09/14 23:46
河童不動産 じいさんと言えば佐々木さん

射谷 友里

射谷 友里(いてや ゆり)と申します
十年以上前に赤川仁洋さん運営のWeb総合文芸誌「文華」に同名で投稿していました。もう一度小説を書くことに挑戦したくなりこちらで修行中です。感想頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容