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 隣に男の子が引っ越してきた。その子は愛嬌がある子で仲良くなるのに時間はかからなかった。毎日のように一緒に遊んだ。ときには一緒にご飯を食べ、ときには喧嘩し、夏休みには宿題を手伝ってあげた。
 その子は、よく嘘をついて私を騙した。嘘に決まってるじゃん、って笑って馬鹿にする。でも、弟のような存在だったから、そんなところも大好きだった。
 その “大好き” に恋愛感情が含まれていたのに気づき始めたのは、出逢って8年が経とうとしていた春だった。
「実は俺、明日 引っ越すんだよね。今までありがとう」
その子は、変声期が終わった低い声でそう言った。いつもの嘘だなと思い、軽く聞き流した。嘘であってほしかった…のに、それは本当だった。
「俺は 君がいないと寂しいけど、君は…俺がいなくても寂しくないよね」
「当たり前だよ」
「…そっか。元気でね」
 走り出した車の背中に手を振った。
「嘘に決まってるじゃん」
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公開:20/08/11 21:00
更新:20/08/11 20:16

酉之介 / ゆうのすけ。

趣味で小説を書いてます。
1日1本投稿していこうとおもいます。

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