セミの声
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「おはよう」
そう言ったつもりだったが、自分の耳に届くのはミンミンミンというセミの鳴き声だった。
母はすぐに僕を病院へ連れて行ってくれたが、声帯から異常な音がする原因はさっぱり分からなかった。
都会の大きな病院へ行けばもっと詳しい検査をしてくれたのかもしれないが、母はそれを嫌がった。
「治らないものは治らない。無駄に病院に行ったって苦しいだけだよ」
母は僕に目も合わせず、小さな声で言った。
幸い夏休み中だったので、声を発する機会は少なく問題はなかった。
病院へ行ってから2週間ほどが経ったある日、僕の声は元に戻った。
母が亡くなった次の日の朝だった。
僕は知らなかったが以前から体を壊していたらしかった。
それから数年経っても、数十年経っても、夏にセミの声がすると僕は大声で叫んでしまう。
「あーー」
喉からセミの声がすることで母が戻ってくる。
そんな子供じみたことを思いながら。
そう言ったつもりだったが、自分の耳に届くのはミンミンミンというセミの鳴き声だった。
母はすぐに僕を病院へ連れて行ってくれたが、声帯から異常な音がする原因はさっぱり分からなかった。
都会の大きな病院へ行けばもっと詳しい検査をしてくれたのかもしれないが、母はそれを嫌がった。
「治らないものは治らない。無駄に病院に行ったって苦しいだけだよ」
母は僕に目も合わせず、小さな声で言った。
幸い夏休み中だったので、声を発する機会は少なく問題はなかった。
病院へ行ってから2週間ほどが経ったある日、僕の声は元に戻った。
母が亡くなった次の日の朝だった。
僕は知らなかったが以前から体を壊していたらしかった。
それから数年経っても、数十年経っても、夏にセミの声がすると僕は大声で叫んでしまう。
「あーー」
喉からセミの声がすることで母が戻ってくる。
そんな子供じみたことを思いながら。
公開:20/08/12 23:04
ショートショートに魅入られて自分でも書いてみようと挑戦しています。
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