ブーケ・トス

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大好きな人から花束をもらった。

ちょっとした小物とかお菓子なんかはお互いによくプレゼントしてたけど、こんなに立派な花束は初めてだ。

六月の青空の下。
あの人が細い腕を目一杯しならせて放ったブーケは、私の胸の中にまっすぐに落ちてきた。

「香織が受け取ってくれるなんて。本当に嬉しい」

紫陽花のブーケを抱えた私の手を握り、心の底から嬉しそうに笑う彼女。
日差しを浴びたウェディングドレスがキラキラと光って眩しかった。

旦那さん、良い人っぽかったな。
私は机に飾ったブーケを、ベッドに転がりながら眺める。

プリザーブドフラワーだから保存がきくって言われたってさ。
いっそ、枯れちゃえばいいのに。

スマホで調べた紫陽花の花言葉はいくつかあったけど、私は「無情」の文字は見なかったことにした。

「お幸せに」と言えなかった自分の小ささに情けなくなって、戻ってきた梅雨空と一緒に少し泣いた。
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公開:20/08/12 21:49

広瀬 ひとり( 湘南 )

面白そうだと思って始めました。
400文字に収めるって、難しい。

noteやってます▶︎https://note.com/hitori_cough

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