ス魔法

私はスマホが嫌いだ。人はスマホばかりに目を向け、周りに目を向けようとしない。
今だって電車の中、老人に席を譲らずスマホを弄る若者が目に付く。本当に腹立たしい。
ここで私が文句をつけようものなら「ガキがうるせぇ！」と怒鳴られて終わりだ。しかも親が睨まれるというオマケつき。５歳児である事が恨めしい。
そんな若者に向け、私の隣に立つ女性がスマホを操作した。若者が消え、老人が座れた。
女性は人差し指を唇に当て『秘密ね』と呟いた。
この人は魔法使いなんだと私は目を輝かせた。

あれから１０年。私もスマホを持つように言われた。正直、気乗りはしない。
ショップに行くと私はあの時の女性と再会した。その人は私に素敵な魔法のスマホ、通称・ス魔法を勧めてくれた。
それを購入し、私もス魔法を使って人助けをするようになった。
このスマホは本当に凄い。
良い事をすればその分利用料金が下がっていくので家計にも優しい。