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「遺族を代表いたしましてひとことご挨拶申し上げます。
故人は一見すると物騒な印象でしたが、その実は、しあわせな家庭生活の象徴ともいえる方でした。目を閉じて故人を思い浮かべるとき、皆様の心にはあの懐かしいお茶の間が浮かんでくることでしょう。テレビから流れる賑やかな笑い声、じゃれあう兄弟たち…

生前はひとかたならぬご厚誼にあずかり、最後のお見送りまでいただき、故人もさぞかし感謝していることと存じ上げます」

荘厳な音楽が流れるなか、すすり泣きの声が響く。
別れを惜しむ参列者たちは花で飾られた祭壇を見上げる。その真ん中には故人ー『チャンネル争い』の文字が。

こうしてしめやかに式は執り行われ、またひとつ、言葉が死語の世界へと旅立っていった。
その他
公開:20/08/12 17:41
お茶の間はまだ生きてる?

工房ナカムラ( ちほう )

ボケ防止にショートショートを作ります

第二回 「尾道てのひら怪談」で大賞と佳作いただきました。嬉!驚!という感じです。
よければサイトに公開されたので読んでやってください。

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