サッパリの教え

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「スダチってのはなんでもサッパリさせるからねぇ。」
そう言って、味噌汁が入ったお椀にスダチを絞るおばあちゃん。
ぼくは訊いた。
「ほんとうになんでもサッパリするの?」
「ああ。なんでもさ。」
ぼくも味噌汁にスダチを絞ってみた。
すると、数滴しか絞っていないはずなのに、いつもの味噌汁が爽やかな味わいに早変わりした。

ごはんのあと、ぼくと妹はいつものようにケンカをした。
きっかけはテレビのリモコンの奪い合いで、些細なことであったが、徐々にヒートアップしていった。
「にいちゃんのバカ!」
もう我慢できない。ぼくはとっさに、まだテーブルの上に残っていたスダチを妹に向かって絞った。
そのあとに自分の頭にも数滴。
こらえきれなくなった妹が、先に吹きだして笑う。
つられてぼくにも笑みがこぼれた。
スダチは、ぼくらのケンカまでもサッパリさせてしまった。
やっぱり、おばあちゃんの言うことはいつも正しい。
青春
公開:20/08/12 15:22

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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