夜更けの5・7・5・7・7

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「好きだよ」と言ってみたはいいけれど、聞こえなかったフリをする彼。

「なんだって?」
「だから好きだよ」
「知ってるよ」
春の夜更けにつながる手指。

「言葉では表せない」と遠い目で、笑った彼の横顔を見る。

いつもそう。いつも私はそうやって、誤魔化されては後悔するの。

「今日こそは、自分の気持ちを答えてよ」
問い詰める声、夜空に消える。

「言わないと分からないかな」
彼は言い、たくましい手で私を抱いた。

呼吸さえできないくらい。大柄な彼の身体に今日も溺れる。

「お父さん、そんなに強く抱きしめて…ハルカの骨が砕けちゃうわよ」

母の声。父は手加減してくれて、「ごめんな」と言い、あくびを一つ。

五歳児と思って甘く見ないでよ。
言葉にできずに、パジャマを直す。

「おやすみい」
「明日の遠足、気を付けて」
心配しすぎなお父さんの手。
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公開:20/08/10 08:20

広瀬 ひとり( 湘南 )

面白そうだと思って始めました。
400文字に収めるって、難しい。

noteやってます▶︎https://note.com/hitori_cough

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