夏野菜の扉

2
3

「それじゃ、お先に」
一人、また一人と胡瓜の馬に乗って現世にある自宅へと帰っていく。
お盆は天国に住む者が家族に会いに行ける唯一の期間なのに私は現世行きの乗り物を予約するのを忘れていた。
ズッキーニ列車は乗車率200%を超えたとニュースでやっている。これじゃ帰れないなぁ…
「お姉さん、もしかして現世行きの乗り物に乗れなかったんですか?」
ハムスターの夫婦が私に声をかけてきた。
「ええ、お恥ずかしながら」
天国では全ての生き物と会話が可能である。
「もし良かったら、私達と一緒に帰りませんか?」
それはとても嬉しい申し出だ。しかし、ハムスターの乗り物に人間が乗れるだろうか?
「心配ご無用。私達夫婦は乗り物を引く馬ですから」
そう言うとハムスターは馬にその姿を変えた。
「さ、南瓜の馬車で良ければお乗りなさい」
気分はまるでシンデレラ。私は夫婦にお礼を言って夏野菜の扉の中へと入った。
「では出発」
公開:20/08/11 19:02
続かない

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容