屋根から死神

「昨夜嵐でヘリが墜落」とニュースが報じている。
　テレビを尻目に俳優にして探偵・土瑠璃 蓮はため息をつく。これほど頭を悩ませたことはない。その頭脳で何度考えても結論は同じ。チェスで言えば詰み。死を回避できそうになかった。強盗の男は薬物依存特有の目つきでピストルを突きつけている。銃で応戦しようにも日本の老優が所持しているわけもない。ピチョンピチョンと雨漏りの水滴が老優の長考を非難するようだ。屋根に穴をつくったのは昨晩の嵐だろう。そこからポタポタ水滴が木の床を濡らす。抉れた床に老優の目が光る。瞬間、老優探偵は机に滑り込み、床穴に手を伸ばす。拳銃"死神'が不思議と手に馴染む。

「クイーンはどうやら常に私に微笑むようだ。チェックメイト」
強盗の銃を正確に撃ち抜き「いい銃だ」と死神を称賛する。

昨晩ヘリから落下し事務所の屋根を突き抜けた死神

気まぐれに"死"から人を救う。

死神残弾のこり2発