ダブルベッドで君と

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家賃20万円、都内のマンション。ダブルベッドで男女が情交を終えた。
「私の事好きじゃないでしょ。伝わるよ、そういうの。」
「そうかなあ」
「ベッド臭いし、雰囲気もないし」
女は皮張りのベッドボードを見て顔をしかめた。
「嫌なら帰れ。もう来るな」
執着なく言い放ったこの男は、この1年で50人と浮気した。今帰宅した女は当然本命ではない。温もりを得たかっただけだ。
「嫉妬しちゃうかな?」
男女の体液で汚れた手がベッドボードを撫でた。

1年と少し前、恋人はこのベッドで突然死した。
朝、木製のベッドボードに置かれた目覚ましを止めたら、隣で冷たくなっていた。
何が起きた。苦しくなかったんだろうか、声をあげてたんじゃないか。助けを求めたんじゃないか。
動揺と後悔が入り混じったまま、男は恋人の肌に触れる。
「君がそばにいてくれるだけで良いんだ」
覚悟を決めて携帯に検索ワードを打ち込む。
『人皮 鞣し方』
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公開:20/08/11 10:00

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