かえりみち

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迎えに来たのは父だった。
俺を見るなり「おう」とだけ言うと、長旅をねぎらう言葉もなく、さっさと背を向けて歩きだした。
変わらないな、全然。

「弟は元気だったか」
黙って歩いていた父が不意に口を開いた。
「ああ、元気だったよ。あいつは当分こっちには来ないだろうな」
「そうか」
そう言って父は、じっと俺の顔を見つめる。
「なんだよ、気持ち悪いな」
「お前も年を取ったな」
「はあ? 当たり前だろ。何年振りだと思ってるんだ」
父は「そうだな」と言って前を向いた。

「着いたぞ」父が言った。
「おお……」
俺の視線の先には、祖父が祖母が母が、あのときと変わらぬ姿で立っていた。
思わず駆け出してよろけた俺を、父が支える。
ゆっくりと、父と一緒に皆の元へと歩いていく。
母が、にこりと微笑んだ。
「お還りなさい」
そう言って差し伸べられた母の手を、俺はそれ以上に皺くちゃになった手で握った。
「ただいま」
その他
公開:20/08/09 12:44

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