すれ違いざまに胸を触る事件

「昨日の昼過ぎ、帰宅していた女子中学生が、自転車に乗った男にすれ違いざまに胸を触られる事件が起こりました。都内では同様の事件が多発しており、注意を促すと共に、防犯体制を敷いております」
　朝から気味が悪いニュースがテレビから流れたが、村の人間はのほほんとしていた。
「えー、都会ってそういう事件未だにあるんだ。大変だねぇ」
「そうだねぇ、やる奴がバカだから仕方ないねぇ」
　この村では公共交通機関がほとんどなく、車や自転車が必要不可欠だ。しかし小中学生は徒歩で通うため、そういう事件があってもおかしくない。
「もっとも、この村で触ったりしたら大変だけどねぇ」
「そうだねぇ、この前うっかりタケさんが山田さんの子の胸を触った時は大変だったねぇ」
　そのタケさんは今、肝臓を売られて入院中である。この村での性犯罪は自身の身体を売るのと同じである。監視カメラが村中に仕掛けており、村の財政難を救う。