色の男(と、編集部の奔走)

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 『季刊 ブリリアントブリッツ』では、新鋭現代絵画において「色彩」が特徴的な、アール氏とジー氏に対談企画を打診した。
 アール氏は、轢死した生物の体液と内臓が描き出す色のアンサンブルを、ペインティングナイフによってアスファルト上に描き続けている。
 ジー氏は、マスメディアに流通する画像の部分、もしくは全体を、某画像処理ソフトの「指先ツール」を用いて丹念に混ぜて単色化したものを、元の画像の輪郭へ流し込む、デジタル作品を発表し続けている。
 アール氏はジー氏を「表面を撫でただけの、内実をもたない記号の戯れ」と批判し、ジー氏はアール氏を「単なる轢死フェチの落書」と揶揄した。
 両者に対談を断られた編集部は代案として、互いの肖像を描くことを提案してみたのだが、アール氏は「ジーが轢死したら描いてやる」といい、ジー氏は「アールの遺影があれば描いてやる」という。
 編集部はその実現にむけて鋭意奔走中だ。
その他
公開:20/08/09 09:58
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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