金魚屏風

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江戸時代、徳川幕府の御用絵師だった狩野派の人物が、将軍家の命を受け、葵の御紋の入った豪華絢爛な金屏風に描いたとされる金魚屏風が、将軍家とゆかりの深い増上寺で発見された。
国立美術館に展示されることとなり、金魚屏風が移送された。搬入作業の準備のため、少しだけ屋外に置いていると、一陣の風が吹き、屏風がパタリと倒れた。
すると驚いたことに、屏風に描かれていた金魚が生きているかのごとく元気に飛び跳ねた。
調査したところ、絵師の魂がこもった渾身の作だったが、屏風が畳まれ封印されていた。外気に触れ、偶然倒れた反動により精緻な筆致で描かれた金魚が生き返った、という結果を発表した。
また、江戸時代に詳しい歴史家によって、将軍家の子供が屏風を倒した状態で金魚すくいを楽しんだ、という学説も唱えられた。
金魚屏風は「生きた屏風」と話題沸騰となり国宝にも指定され、連日、数多くの人々が国内外から国立美術館を訪れた。
その他
公開:20/08/09 07:19
江戸時代 徳川幕府 御用絵師 狩野派 将軍家 金屏風 増上寺 国立美術館 金魚すくい 国宝

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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