ランドセルに死神

その死神は拳銃の形をしていた。
或いは拳銃が死神を模しているのかもしれないがそれは重要なことではない。あまたの死を生み出したそれに5発の死の種子が内包されている。それが人間たちの運命を変え、或いは歪めていく。
　同級生たちの暴力を浴び、青紫に腫れた少年のまぶたには河川敷に滲む夕焼けがいささか染みた。鼻の絆創膏を貼り直す。
　暴力は災害に過ぎない。少年に敵などいない。味方もいないのだから。強いて定義すれば世界そのものが少年に敵対していた。
　泥まみれのランドセルから包みを取り出しキャベツのように新聞を剥がすと濃紺じみた暗闇に死神が持ち上がる。吸い込まれるような黒い鉄の塊はずしりと重い。その重みの分だけ不思議と心は軽くなった。ランドセルに忍ばせている間だけは不思議と生きている心地がした。

数日後、小学校で銃の発砲事件が発生。児童1名が行方不明と報じられた。

死神残弾数のこり4発