とべ

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「メイ、悩んでいるんだろ?」

リビングで俯く娘に声をかけた。大会まであと一年。決断の時は迫っている。

走り高跳びに青春を捧げてきた我が娘。最初は人並みの記録しか出せなかった。ところが、大学に入り身体が成長するにつれ記録は飛躍的に伸びた。このままなら代表入りは間違いない、ただ……。

「……パパ、やっぱり私、ママのほうを選ぶ……ごめんね」
「謝ることなんてない。今でさえ騒がれている。代表入りして金メダルをとったとしても、メイにとってそれはきっと幸せなことじゃない……行くのか?ママのふるさとに」
「……うん、あっちで勝負してみる」

私は娘を抱きしめた。幼い頃に妻を亡くし、男手ひとつで育ててきた一人娘。宇宙人の妻と地球人の私との間に生まれた、大事な一人娘。

「思いっきりはばたけ!パパ、応援してるからな……!」

私につられるように娘も涙をこぼす。その肩で妻譲りの真っ白な翼も小さく震えた。
ファンタジー
公開:20/08/08 21:10
更新:20/09/05 11:30
空想競技 いや、違うか?

makihide00( 鳥取→東京→福岡 )

30代後半になりTwitterを開設し、ふとしたきっかけで54字の物語を書き始め、このたびこちらにもお邪魔させて頂きました。

長い話は不得手です。400字で他愛もない小噺を時々書いていければなぁと思っております。よろしくお願いします。

Twitterのほうでは54字の物語を毎日アップしております。もろもろのくだらない呟きとともに…。
https://twitter.com/makihide00

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