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うちの墓を建て替えたい。親父が突然言い出した時、好きにしろと答えた。
業者に話が行った後で、テーブルには契約書が乗っていた。提示金額は相場の倍近く、多くもない貯金をほぼ食い潰す額だった。
いずれは皆の住む『家』だから。口で転がす文句を、好きにしろと叩き切った。昔から何をするにも、家族の意見を聞く事のない人間。使い果たしてくれた方が、いっそ気が楽だと思った。
やりたい放題のツケで病気の巣窟だった親父は、念願の『新居』完成を見届けた後、半年余りで入居の運びとなった。
最期まで、らしい人生だったな。花器に酒を、線香立てには煙草を立てて納骨を済ませた。
ぴかぴかの石扉を閉め、記念撮影の段になって気付く。
白黒で編まれた御影石にリーダーをかざす。
模様に扮したQRコードを開いた先、目に飛び込んだのは写真だった。アルバムでは見た憶えのない、下手くそに見切れた失敗作の山が、日に灼けた顔で笑っていた。
業者に話が行った後で、テーブルには契約書が乗っていた。提示金額は相場の倍近く、多くもない貯金をほぼ食い潰す額だった。
いずれは皆の住む『家』だから。口で転がす文句を、好きにしろと叩き切った。昔から何をするにも、家族の意見を聞く事のない人間。使い果たしてくれた方が、いっそ気が楽だと思った。
やりたい放題のツケで病気の巣窟だった親父は、念願の『新居』完成を見届けた後、半年余りで入居の運びとなった。
最期まで、らしい人生だったな。花器に酒を、線香立てには煙草を立てて納骨を済ませた。
ぴかぴかの石扉を閉め、記念撮影の段になって気付く。
白黒で編まれた御影石にリーダーをかざす。
模様に扮したQRコードを開いた先、目に飛び込んだのは写真だった。アルバムでは見た憶えのない、下手くそに見切れた失敗作の山が、日に灼けた顔で笑っていた。
その他
公開:20/08/08 19:45
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
https://amzn.to/32W8iRO
ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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