煙草
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マルボロゴールド520円。
仕事帰りにコンビニでタバコを一箱買う。なれた手つきでフィルムを剥がし、一本取り出す。火をつける。
いつから吸い始めたかは明確に覚えている。21歳の夏、あの人に出会ってから。あの頃の私は、ひと回り年上のあの人にどうしようもなく惹かれていた。しつこく飲みに誘っては、たまに相手をしてもらっていた。時折、あの人の前の奥さんや、周りの同性にジェラシーを感じながらも、名前のつかない自分の立場に苦しめられていた。あの人が吸っていたのはセブンスター。会えない日に、不安をかき消すために真似して吸い始めた煙草。あれからかれこれ12年が経つ。ちょうどあの頃の彼と同じ歳。こんなに誰かを好きになるのは初めてだった。
「……まず。」
「だから吸わなきゃいいのに。」
今の彼は煙草を吸わない。けれど私は吸い続ける。あの人を忘れないように。
仕事帰りにコンビニでタバコを一箱買う。なれた手つきでフィルムを剥がし、一本取り出す。火をつける。
いつから吸い始めたかは明確に覚えている。21歳の夏、あの人に出会ってから。あの頃の私は、ひと回り年上のあの人にどうしようもなく惹かれていた。しつこく飲みに誘っては、たまに相手をしてもらっていた。時折、あの人の前の奥さんや、周りの同性にジェラシーを感じながらも、名前のつかない自分の立場に苦しめられていた。あの人が吸っていたのはセブンスター。会えない日に、不安をかき消すために真似して吸い始めた煙草。あれからかれこれ12年が経つ。ちょうどあの頃の彼と同じ歳。こんなに誰かを好きになるのは初めてだった。
「……まず。」
「だから吸わなきゃいいのに。」
今の彼は煙草を吸わない。けれど私は吸い続ける。あの人を忘れないように。
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公開:20/08/09 22:22
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