天狗のクールビズ

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古くから私たち天狗は、ヤツデの葉でできたこのうちわ一本で、夏の暑さを乗り切ってきた。
しかしこのごろ、愚かな人間共の仕業で地球温暖化が進み、昔よりもはるかに暑い夏が訪れるようになった。
今年の夏はもう、このうちわだけでは。
思い切って、私は電気屋に足を運んだ。
すると、人間共も我々に気を遣っているのか、羽がヤツデの葉でできた、天狗用扇風機たるものが売られていた。
私は意を決してそれを購入し、山に持ち帰った。
その晩は熱帯夜だったが、扇風機のおかげで涼しく快適に眠ることができた。
翌朝、いつものように山の上を飛んでいると、ある仲間の天狗に出会った。
仲間は私の顔を指さして言った。
「どうしちまったんだ?その鼻。」
自分の鼻に手を当てて気づく。
一晩中、ヤツデの葉の風を浴びていたせいで、私の鼻は普段の倍以上の長さに伸びていたのだ。
涼しい顔が一変、恥ずかしさで、私はこれまでにないほど赤面した。
ファンタジー
公開:20/08/09 21:14
更新:20/08/09 21:26

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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