逢いたい人

2
4

私の住む村では『お盆の時期、迎え火を焚くと死者が目の前に現れる』なんて言い伝えがある。
そんな非現実的な事が起るものか。…と理解していても私は迎え火を焚く。
5年前、山で行方不明になった彼を呼び出す為だ。過去4回、一度も彼は現れていない。それはつまり生きている事を意味し、それにホッとする。
「姉さん、僕トイレに行ってくるね」
迎え火を準備してくれた弟が席を立った。
「よう…久しぶり」
入れ替わるように、彼が現れた。
「すまんな。俺、死んだわ」
そう言って生前と変わりなく笑う彼に涙が出た。
「おい、泣くなって。今日、やっとお前を迎えに来る事が出来たんだからさ」
迎えに?
「お前は4年前、事故で亡くなったんだ。この迎え火は弟がお前を呼ぶ為に焚いた火だぞ」

僕がトイレから帰ってくると、迎え火は消え、姉さんもいなくなっていた。
そっか…姉さん、やっと迎えに来て貰ったんだ…さよなら、僕の初恋の人。
ファンタジー
公開:20/08/09 18:41

幸運な野良猫

元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容