カササギ配達員

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コンコンとノックが聞こえる。玄関を開けると、一匹の黒い鳥がそこにいた。違うよ、あれは鵲だよ、と得意げに話す君のことを思い出した。黒い体に白いライン。鵲は肩から下げた郵便鞄から、一通の便箋を取り出した。底の見えない海のような、深い青い手紙に、金の押印。
「あなた宛のお手紙です」
心当たりは全くないが、その場で開封した。刹那、掌に溢れる冷たい液体。海水だ。あるいは雨の水。僕を飲み込んで、辺りはすっかり深い青だ。
どこまでも青だ。奥に行けば暗い、深い深い海の果て。
「沈むんじゃない、昇るんだよ」
君の声が聞こえる。万雷の拍手に似た、力強い鵲たちの飛翔。
眼下には一面の煌めき。海じゃない。どこまでも広がる天の川。
「面白いだろう。鵲の羽ペンと井戸から組み上げた夜のインクだよ」
気がつくと僕は玄関に立ち尽くしていた。パタタと髪から水が落ちる。悪戯好きな友人に、してやられた。仕返しの手紙は何にしよう。
公開:20/08/08 17:44
更新:20/08/08 17:45
七夕

風月堂( 札幌 )

400文字の面白さに惹かれて始めました!
文字や詩のようなものを書くのが趣味です。
情緒不安定気味でアゲサゲ落差のひどい人間ですw
いろんな方々の作品を読んで、心を豊かにしていきたいです。

無料の電子書籍をつくりました。
『ショートショート作品集カプセルホテル【】SPACE』
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『枇杷の独り言』
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写真は全て自前でやっています(笑)

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