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くだらない小噺を一つ。
出会いは奇なもの味なもの。
江戸の夜で会いたかないのが幽霊と辻斬り。
祟りも人斬りもおっかないってんで提灯片手に帰るところに声がします。
「落としましたよ」
振り返れば白着物、美女が佇んでおります。
「ハンケチ拾ってくだすったんかぃ?」
儚げに首振る姿は浮世にない美しさ。
落っこちたのはこちらの心、恋に落ちるってな一瞬です。反面、心は浮ついちまい手にゃおえない。「恋はじぇっとこーすたー」たぁよく言ったもんだ。

「あっしは何を落としたんで?」
呆けた顔で聞くけれど、答えなぞ知れたこと、頭もぐらぐら参っちまいます。

「お心当たりは?」「見当もつかねえや。」

問答していると、女が鏡をこちらに向けます。
映るは肩から袈裟に斬られた刀傷。血に染る己が姿。

「逝きましょう。」
美女に連れられ男は考えます。

さて、斬られ落としたこの命、
行く先は地獄落ちるか天に昇るか?
ホラー
公開:20/08/08 16:11
小噺 怪談噺

伽藍堂 無一文( 寄席 )

伽藍堂無一文(がらんどうむいちもん)
しがない噺屋風情が芸の肥やしにこちらで厄介になっております。
兄さん、姐さんがた、どうぞお見知り置きを。

たまに拝読、感想を残しやすが、
江戸弁忘れた時ゃ内緒にしといてくだせぇ。

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