風便

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『ピンポーン♪』
『どちら様ですか?』
『風便です』
(風便ってなんだろう?)
怪訝に思いながら玄関の扉を開けてみると、風のように涼し気な配達員が小包を抱えて立っていた。
「風便のお届けです」
「ありがとうございます。ところで『風便』って何ですか?」
「よく『風の便り』っていうでしょう。あれのことですよ」
そう言い残すと、配達員は風のように颯爽と去っていった。
小包の宛先を確認すると、田舎に住む両親からだ。
受け取った小包を開封してみると、空気がいっぱいに入った透明なビニール袋が入っていた。
何かの冗談だろうと思いつつビニール袋を開けてみると、急に懐かしい香りとともに一陣の風が吹いた。これは故郷の風だ!
社会人となって都会で独り暮らしを始めてから十数年、忙しさにかまけて一度も実家に戻っていない。
すると、風に乗って父の声がしてきた。
「たまには顔を出せ。母さんと帰ってくるのを待ってるぞー」
青春
公開:20/08/08 07:33
配達員 小包 風の便り 田舎 両親 ビニール袋 故郷 社会人 都会

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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