夏の戦い

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やってしまった。

あの時は許せなかったのだ。緑の艶めいた身体から発せられる臭いが僕の怒りを駆り立てた。

ただ昨日は暑さや部活の長時間練習を強いられたせいでやつを見るなり皿を母に投げてしまった。
母は激怒して、僕はただ逃げた。

そして、今日。母に弁当を作ってもらえるか起きてすぐにその事が気がかりとなった。
しかし、その悩みはすぐにふきとんだ。朝、台所におりると袋に包まれた弁当の姿が。
なんだ、良かった。母のちょろさに安堵して弁当をかっさらうと家を出た。

お昼になり弁当の包みをほどいた。1枚の手紙が入っていた。
新鮮そのものです。食べてください。
             母 
 
僕はお弁当のふたをゆっくりと開けた。すると緑の枝が弁当箱から威勢よく天井に伸びてゆき緑のやつがつやつやした顔でこちらを見下ろしていた。

確かに新鮮だ。
そして思った。母ほど恐ろしいやつはいないと。
その他
公開:20/08/06 14:45

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