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暑い。

うだるような暑さと、体育終わりの教室。国語教師の音読と、下敷きであおぐペコペコ音。

「授業中にあおぐなよー。」

音読の合間に注意する声。
そんなこと言ったって、暑いものは暑い。あおいでいないとやってられない。

全開にされた窓に、本当に開いてるのかと疑いの目を向ける。もしかしたらあそこにはガラスがあるのではないだろうか。

「あ」

音読を遮るように、誰かが呟いた。声の方向を確認し、それから上へ目を向ける。

「蜂だ」

突然の訪問者に、皆が視線を集める。白い天井に一点の影。ゆらゆらと不規則に彷徨っては、たまに降下してくる。近くの席で、ガタガタと椅子を引く音が鳴る。

蜂はしばらく教室を彷徨い、それからふらっと窓を通過し、どこへともなく飛んでいった。

教室にまた静けさが訪れる。暑さは依然変わらず。しかし、窓は本当に開いているようだ。
青春
公開:20/08/05 23:18
更新:20/08/05 23:20

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