二人乗りラジオ体操

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20XX年、ラジオ体操は乗り物と化した。
公園にあるその乗り物は、アメ玉みたいに透明で、大きくてまあるい。
中のイスに座るとラジオ体操の曲が流れ、それを聴くだけで運動不足解消の効果がある。

ある朝、同級生のしんちゃんがあれに二人乗りしようと言い出した。
ぼくらはアメ玉に入り、一つのイスに詰めて座った。
すると、なんだろう。いつもとよく似た、でも少し違った曲が流れた。
もしかして。じいちゃんも実際には踊れないって言っていた、幻のラジオ体操第二だ。
これにはしんちゃんも気づいている様子だった。
曲を聴き終え、ぼくらはいつもみたいにおじちゃんにスタンプをもらいに行った。
しんちゃんが言った。
「おじちゃん、おれたち今日第二踊ったんだ!」
「そうかい。じゃあ今日は特別に。」
おじちゃんは、ぼくとしんちゃんのカードにスタンプを2つずつ押してくれた。
その瞬間、今日はなんだか良い一日になる気がした。
SF
公開:20/08/07 13:02
更新:20/08/07 14:01

日常のソクラテス( 神奈川 )

空想競技コンテスト銅メダル『ピンポンダッシュ選手権』
空想競技コンテスト入賞  『ダメ人間コンテスト』
ベルモニー Presents ショートショートコンテスト入賞 『縁茶』
X (twitter):望月滋斗 (@mochizuki_short)

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