反復横歩き

4
3

 幅2メートルほどの狭い通路ですれ違う瞬間。
「あっ、すみません」
 流れるようにお互いが、右側へ体を避けた。正確には私から見て右に、互いが道を譲ろうとした。
「ぬっ」
 続いて、今度は二人とも左側へ避けた。気まずい空気。道の真ん中でお見合い状態になっている。
「へっ?」
 3回目の邂逅。そこで両者は理解した。互いが反復横歩きの選手であることに。つまり人とすれ違う際、何度同じ方向に避けられるかに挑む競技者であることを。

「おっ」
「っと」
「はっ」
 繰り返されること10回。中々の好記録が出た。「ありがとうございました」そう相手が差し出した右手に、私は思わず左手を出そうとして引っ込める。
「握手は右手同士でしたな」
 笑い合う二人。すると背後からベルの音が聞こえた。
「あんたたち邪魔よー!」
 見ると、ご近所のおばさまが自転車を漕いできている。私は右から来る自転車を避けるため、体を右へ…
その他
公開:20/08/07 09:25
更新:20/08/07 09:39

はつみ

現実世界の2次創作
誰かに教えたくなるような物語を書きたいです

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