空想競技

深呼吸。目を閉じてイメージする。
自分が、高く跳ぶ/速く走る/遠くに投げる/ボールを追ってぶつかり合う/姿を。
マットへ背中から落ちる/先頭でテープを切る/砂を巻き上げ着地する/姿を。
スタジアムに湧き上がる、歓声、拍手、ウエーブ。舞い降りる紙吹雪。
いける。いまの自分ならあの輝くメダルを手にすることができるはず。
胸の鼓動が速くなる。
彼/彼女は、走り/跳び/回り/叫ぶ。
己の肉体の躍動を力いっぱい楽しみながら。

「はいはい、みんな帰るわよ」
公園でアスリートになりきって走り回っていた子どもたちは、それぞれの母のもとへと駆け寄る。自分がいかにすごかったかを、頬を紅潮させながら語る。
手を繋ぎ、家路に帰るその胸には、輝くメダルがぶら下がっているのだ。