星のカンヅメ

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無数の星が見える。ベテルギウスが浮かび、時折ペルセウス流星群が流れている。
それは街灯の少ない町の夜空ではなく、小さなカンヅメの中だった。

ほとんど擦れてしまっているが、ふたには「メヅンカノシホ」を書いてあり、長い歴史を匂わせる。開けた誰かがマメな性格のだったのか、ふたとのつなぎ目を1センチだけ綺麗に残して保管されていた。こっそり押し入れに入って、興味本位に星をめがけて指を入れてみると、カンヅメ銀河は少しだけ温かかったが、一つもつまんで取り出すことができなかった。だが、銀河は覗くたびに色の温度や光の強さが変わっていた。

カンヅメを孫に譲った。白昼の大地震によって地軸の止まった地球に、夜は訪れなくなっていた。日陰になるキッチンカウンターの下にもぐり、一緒にカンヅメのふたをそっと開ける。
今にも消えてしまいそうな、ちいさな、ちいさな六等星が一つだけぷかりと浮かんでいた。
SF
公開:20/08/18 15:00
更新:20/08/13 01:27

まのじゅん( 神戸 )

まのじゅん/間野 純
神戸市在住の26歳
執筆は2020年春ごろから

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